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DSG組み込みのポイント Siegetek Concepts(以下 SC)が製造販売している 1回転で2回コッキングを行う特殊ギア"DSG (Dual Sector Gear)"に関する 組み込みと取り扱いのポイントです。 通常のギアと毛色の異なるパーツで、いくつか注意点がございます。 それらを、今までに起こったトラブル事例を交えて紹介したいと思います。 基本的な組み込み型は、取扱説明書を参照してください。 |
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@ フルオートで初速が低下する DSGを使用している時、セミオートでは初速が出るのに フルオートでは初速が出ない、と言う症状が発生します。 原因はいくつか考えられますが、 タペットプレートと閉鎖タイミングが原因と言うことが多く 圧縮中に気密を解放してしまうことが大半です。 DSGはご存じの通り8枚×2カ所のショートストローク倍がけ仕様で、 タペットの後退→前進サイクルも、従来の半分しか時間が取れません。 この事から、DSGで重要なのは 「確実に最後端まで引くことと、如何に早く閉鎖するか」 と言う事になります。 左の写真を例にとってご紹介します。 今回使用しているのはSHSのVer.2用タペットプレートですが、 タペットウイングが前側に張り出しすぎていて 閉鎖したノズルをすぐに解放してしまい、気密漏れを起こしています。 セミオートでは90m/sですが、フルオートでは70m/sまで落ち込みます。 |
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まずは前側に広がりすぎているウイングを削ります。 このタペットプレートに関しては、後ろから14mm程度から 調整をかけていき、ちょうど良い塩梅となりました。 |
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調整方法ですが、まずDSGの取説通りバー下面から ウイング下面まで11mmに切断し、 ギアを回しながらピストンがリリースされる寸前まで、 タペットが一番引かれた状態で保持されるようにウイングに角度をつけます。 |
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この時、バーとウイングの付け根に少しRを残しておくのがポイントです。 ここを角にすると、そこに応力が集中してバーが折れやすくなります。 |
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そして、リリース一歩手前くらいでタペットが半分くらい戻るように ウイングに面取りをつけます。 DSGは素早く引いて即閉鎖、が基本となります。 基本的にディレイヤーは不要で、タペット調整とノズルストロークの確保、 チャンバーの位置合わせがしっかりしていれば STD M4系列ならば50発/s前後までノーマルマガジンで給弾します。 |
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ポイントその2 閉鎖を少しでも早めるため、タペットスプリングを2/3位にカットして テンションを強くします。 あまり切りすぎると、引いた時にバネの降伏点 (材料が伸びきってバネとしての機能を失ってしまうポイント) を通り越し、壊れてしまうので注意してください。 |
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A 軸が折れる こちらは軸折れ破損が起こったスパーギア (いずれもGS-RP-C 14.09:1)です。 根元からポッキリ折れてしまっています。 折れた軸を見ると、表面のリン酸マンガン皮膜処理が剥がれ 銀色になっており、表面に無数の傷が付いています。 これは軸受けと焼き付きを起こした跡と思われ、 軸がねじ切られるように破断したと考えられます。 SCギアの軸は、φ3から若干マイナス公差で、φ2.96辺りを狙って作られています。 一般的な軸受けはもちろん、各種ベアリングにもスムーズに装着できるようになっています。 しかし、ごく希に製造公差できつめの軸受けが確認されていますので 必ず仮組みし、スムーズに軽く回る事を確認してください。 また、高い表面硬度も災いし、焼き入れの入ったスチール軸受けや ステンレス軸受けとは相性が悪い傾向にあります。 こう言った軸受けを使う際は、必ず潤滑油を切らさないようにしてください。 似たような硬度の素材同士は、潤滑油が切れると焼き付く可能性が高いです。 ベアリングは推奨されませんが、使用する場合は必ず8mm以上の物を使い 薄型タイプや中華製など、中の玉が小さく品質の悪い物は絶対に使わないでください。 |
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B 潤滑油切れ 先に述べた通り、高硬度材を使っているSCギアに潤滑油切れは大敵です。 SCギアは表面にリン酸マンガン皮膜処理という 耐食、対摩耗、潤滑処理が施されています。 この皮膜には、潤滑油をしっかり保持すると言う性質もありますので 使用する際は写真左側のように、丁寧かつたっぷり潤滑油を塗り込んでください。 塗り込む際、筆を使用すると便利です。 |
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C初速が出ない DSGを使うにあたって、一番悩むのがこれです。大半の原因が ・ノズルとパッキンの位置関係が適正で無い ・チャンバー周りでエア漏れが起きている ・スプリングレート不足 の3種類となります。 まず、ノズルとパッキンの位置関係から見ていきます。 ノズル先端には、パッキンに突き刺さるようにテーパーがかかっていますが このテーパーが適正量パッキンに突き刺さっていないと気密が取れず、エア漏れを起こします。 写真の様にメカボとチャンバーを仮組みした際、0.5mmほど パッキンの弾力を感じられるようならばOKです。 また、中華に良くある先端がフラットな形状のノズルは気密が取れないのでNGです。 パッキンの中には、気密を取るために給弾側の入り口を絞ってある物がありますが 弾がスムーズに通らないと、弾詰まりを起こして破損してしまいます。 チャンバーに組んだ段階で弾を入れ、ごく軽い力で通るようならばOKです。 その状態で、上記のように0.5mmほどノズルが刺さるようならば、位置関係はOKです。 |
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続いてチャンバー周りのエア漏れです。 意外と気づきませんが、ここから盛大に漏れているケースがあります。 Prowinチャンバーの様に、内径が広いタイプのチャンバーに起こりやすく こう言った場合、バレルにアルミテープなどを巻いて気密を取ったり PDIのWホールドパッキンなど、気密リブのあるパッキンを使うのも良いでしょう。 パッキンの中には、位置決めのリブが無いストレートタイプの物がありますが そのリブがはまるバレルの溝から盛大にエア漏れを起こしますので 必ず溝にエポキシ接着剤などを流し込んで成型し、エア漏れを防いでください。 ここを調整するだけで、10m/s以上上がったケースもあります。 |
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最後にスプリングのテンション不足です。 スプリングのテンションが不足していると、ピストンが前進しきる前に 再度ギアが回ってきてタペットを解放し、エア漏れを起こして初速が伸び悩みます。 ギアクラッシュはしないけれど初速が伸び悩む、と言う時はこの症状を疑います。 (本当にクラッシュするかしないかの絶妙なバランスで成り立っています) 左の図は、SCが公開しているスプリングレートのチャートです。 バレル長は363mmです。 下の値がフルストローク時の初速で、一番左端を例に取ると フルストローク時に120m/s出るセッティングにおいて、 DSGにすると70m/s、DSGとSGSを併用すると96m/sになる と言う意味です。 (日本において、規制値をオーバーするセッティングは違法となりますので注意してください) このチャートに倣ったスプリングレートがあれば、 メーカーテスト状はこれだけの初速が出ると言う事になります。 経験上ですが、バレル長が247mmあればSYSTEMAのM120やPDIの130%PRO、 G.A.W. DSG用M95スプリングとSGSで90m/s以上となります。 サイクルが上がってくると、今度はサイクルに追いつくだけのレートが必要になってきます。 これも経験上ですが 50rps以下 : M120クラス + SGS 50rps以上 : M130クラス + SGS 60rps以上 : 未確認(海外ではM210等をSGS無しで使っています) で、ピストンスピード不足による初速低下は解消されました。 いずれにせよ、50rpsを超える"廃サイクル"は ベンチマーク的な要素が強くなってきますので、 心してチューニングに挑んでください。 今後も情報や事例が溜まってきたら、定期的に追加していきたいと思います。 |
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D異物巻き込み ピストンクラッシュの際、割れたラックギアの破片や 組み合わせたギアなどの破片がギアの隙間に入り込み、歯が欠ける事があります。 ラックギアなどの焼結合金は脆い物の、硬度だけで見ると 焼き入れを施した鉄並みにあります。 こう言った硬い物を噛み込んでしまうと、いくら強度のあるDSGといえ 写真の様に歯が欠けてしまいます。 ラックギアは破損しないよう接着処理を施したり、 他社のギアと組み合わせる場合は焼結合金製を避け しっかりした切削ギアを使用しましょう。 |