FETの抵抗配置と発熱の度合い

以前、各種FET回路と発熱の度合いと題し、FETの発熱データを記載していました。
その記事内で、FETの回路が従来と異なり、発熱の度合いが大きく異なったと記載しておりましたが
その後、詳細なご指摘を受け再計算、再実験したところ、当初と大きく異なる実験データを得ることができました。

関係各位、ご迷惑をおかけいたしまして、大変申し訳ございませんでした。
今回実験で出たデータを踏まえ、何故以前の実験で異なるデータが出たのかを考察していきたいと思います。
上の図に記した2つの回路が、今回の件の発端となりました。
右図が一般的なFETの回路で、抵抗100Ωと30kΩを直列に配置し、間からFETへ信号線を引く方式です。
左図は私が使用している回路で、100Ωと30kΩを並列に配置しています。

FETを用いたゲートドライブ回路において、大きな負荷電流をD-S間に流すには
ゲートに相応の電圧をかけないといけないことは周知の事実と思います。
ここで、電源電圧を8.4Vとし、各回路でゲートにかかる電圧(VGS)を計算すると

右回路図
8.4-(100×(8.4/(30000+100)))=8.372V

左回路図
並列回路なので、8.4Vそのまま

と、その差はたった0.028Vとなり、ほぼ無視できる値だと言えます。
それでは、実際に実験したデータを見ていきたいと思います。
実験環境

今回はFETにIR社 IRLB3034PbFを用い
同じ配線長で抵抗配置だけを変えた回路を2つ作りました。

写真には写っておりませんが、
この後ゲート信号をオシロスコープで拾うための
配線を追加してあります。
実験に用いたのは、被検体として定評のあるVer.6メカボックスです。

シリンダーはSYSTEMAのNBシリンダーフルサイズに変わっていますが
その他中身はノーマルです。

モーターはEG1000を使用し、還流ダイオードとして
SBDを装着しています。
電源装置は以前の実験と同じ
KENWOODのPS10-35を使用しています。

今回は電源電圧8.4V、電流リミットを30Aに設定しています。
今回はVGSと波形を測定するために
オシロスコープを使用しています。
通常FET 発射回数 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 最小値 最大値 上がり幅
抵抗配置その1(右回路図) FET表面温度 22.4 22.3 22.7 23.1 23.4 23.9 24.3 24.9 24.5 24.4 24.1 22.3 24.9 2.6
抵抗配置その2(左回路図) FET表面温度 21.9 22.2 22.4 22.9 23.0 23.4 23.7 23.7 23.8 24.0 23.9 21.9 24.0 2.1

上が、今回実験したデータになります。
発熱具合に差は見られましたが、スタート時の温度も違いますし、
上がり幅を見ても、その差はたった0.5℃とほぼ無視できる範囲ではないでしょうか。

これらから、抵抗配置の違いによる発熱差は殆ど無いと言えます。
次に、オシロスコープで観測されたVGSの波形を見ていきます。
このグラフは縦1マスが電圧5V、横1マスが時間25msを表しています。

まずは右回路図(直列抵抗)の波形です。

ON直後、電源電圧の8.4Vに近い電圧がゲートにかかります。

直後、モーターが回り出し、大電流による電源の電圧降下によって
VGSが一時的に大きく下がります。

モーターが回転速度を上げるにつれ、負荷電流が減少するので
それに応じてVGSも次第に上昇します。

そして、カットオフによって電源が断たれ、
VGSは0となります。

これがセミオートにおけるVGSの変化になります。

左図で、一瞬だけVGSが0になっているのは
動作時の振動か何かで一瞬だけスイッチが
離れてしまった為ではないかと思われます。

このような波形は、これ1回しか計測されませんでした。
2回目の波形です。
カットオフ間際、VGSがほぼ電源電圧まで
回復しているのが分かります。
3回目の波形です。
こちらも同様です。
続いて、左回路図の波形です。

他の回路に比べて、カットオフ時間が短いのは
パワーのあるバッテリーを繋いで、セミオートのサイクルが
長、短、長、短となる減少が起こっている為です。
2回目の波形です。

セミのサイクルも安定してきて、
右回路図とほぼ同じ波形、電圧となっています。
3回目も同様でした。

VGSの大きさ、波形共にとりわけ変化はなく
結論として、抵抗配置の変化による差はほぼ無いと言えます。

しかし、これはFETを1石で使用した場合となります。
2石以上の並列接続の場合、FET同士で発振してしまう
寄生発振という現象が起こってくるので
その際はまた違う結果が出てくるかもしれません。

それについては、また時間を見つけて調査してみたいと思います。
考察 : なぜ前回は抵抗配置で大きく測定結果が異なったのか

前回、右回路図と同様の配線で電源電圧が10Vに対し、
VGSが7Vちょっとと異常に低い値を示していました。
これは明らかに異常な数値です。
(それを見て何も感じなかった当時の私も問題有りだったのですが、、、)

VGSが大幅に下がってしまった原因として考えられるのは

・ブレットボードの老朽化で、接触抵抗が大幅に上がっていた
・信号線に古い物を使っており、腐食していた可能性があった

が最有力となります。
また、FETにIRL3713を使用していました。
こちらはセットで格安の物を購入したのですが、
表面がボソボソで酸化したはんだの様な質感でした。
一時期噂された「低品質の偽物」を掴まさせた可能性も否定できません。

ひとまず、正規品のFETを使用し、新品の配線、抵抗を使って
しっかりはんだ付けすれば、発熱の差はほぼ無い事が証明されました。
今後、実験する際に注意しなくてはならない点として
私自身、肝に銘じようと思っています。