配線交換によるサイクルの変化

前回の実験でFET化だけでは電動ガンのサイクル/レスポンスが
向上しないことが判明し、FET化に伴う配線交換が
サイクルアップの主な原因ではないかと推測し、
タイムリーに掲示板でドラ猫さんから実験リクエストもありましたので
今回、それを実験してみました。

今回用意した配線は全部で4種類で、
本当ならばノーマル配線も用意するべきだったのですが
自宅にノーマル配線は既に存在せず(笑)
手に入る配線4種類を用い、どのようにサイクルが変化するかを
調べてみました。
今回使用した配線のスペック(↑の写真、上から順番に)

・イーグル模型 シリコン銀コード14GA
導体線径/本数 : 0.07mm〜0.08mm 銀メッキ銅線/280本(多分、、、数えるのが辛すぎます)
断面積 : 2.06(平方mm)
最大導体抵抗 : 公表値無し
定格電流 : 32A

・イーグル模型 シリコン銀コード16GA
導体線径/本数 : 0.06mm 銀メッキ銅線/252本(多分、、、数えるのがry)
断面積 : 1.31(平方mm)
最大導体抵抗 : 公表値無し
定格電流 : 22A

・オヤイデ電気 RSCB 1.25sp シリコンゴム絶縁フレキシブル電線
導体線径/本数 0.12mm メッキ無し銅線/112本
最大導体抵抗 : 15.0(Ω/km 20℃) 今回の実験では150mm×2で、計算上は0.0045Ω(4.5mΩ)
定格電流 : 公表値無し

・田中電線 テフロン被覆錫メッキ 1.25sq 機器配線用フッ素電線
導体線径/本数 0.18mm 錫メッキ銅線/50本
最大導体抵抗 : 15.5(Ω/km 20℃) 今回の実験では150mm×2で、計算上は0.00465Ω(4.65mΩ)
定格電流 : 公表値無し

・エーモン ダブルコード 0.50sq相当
導体線径/本数 0.16mm メッキ無し銅線/20本
最大導体抵抗 : 公表値無し
定格電流 : 12V 60W MAX (5A)

イーグル模型のシリコン銀コードシリーズは古くから人気のある配線で、もはや定番ともいえる品です。

オヤイデ電気のシリコンコードはイーグルの代替品として使っている物で、同じ16GA(1.25sq)でも
イーグルとは導体の仕様が違うので、今回はその比較も兼ねています。

田中電線のテフロン被覆線はマルイの純正と同様、細い割りに被覆が非常に強靭で、曲げるとコードが形状を留めているので
メカボックス内の配線に適した配線です。

エーモンのコード本来ならば車の電装などの軽負荷用で、Hummer1000の時のみテストしました。
もちろん定格不足です。定格の3倍近い電流が流れるG&P M120モーターでは恐ろしくて実験できません(笑)

今回の実験ではこれらを150mmピッタリに切りそろえ、+と-の2本ずつを用意しています。
測定のレイアウトです。
使用したのはいつも実験に使ってるVer.6のメカボックスで、
スイッチの接触抵抗を排除する為に
モーターの端子に配線を直接はんだ付けしています。
(ON OFFは電源装置側の出力ボタンで行います)
中身はノーマルで、シリンダーだけ社外品になっています。

モーターはイーグル模型のHummer1000と
G&PのM120ハイスピードを用いてデータを取ります。
モーターには逆起電力吸収用のダイオードがついていますが
サイクルにはまったく影響を及ぼしません。

消費電流はHummer1000で約8A、M120で約13Aです。
実験結果は下記の通りになりました。

実験科目 サイクル(発/s)
イーグル模型 シリコン銀コード 14GA
+イーグル模型 Hummer1000(電源9V)
15.7
イーグル模型 シリコン銀コード 16GA
+イーグル模型 Hummer1000(電源9V)
15.7
オヤイデ電気 RSCB 1.25sp シリコンゴム絶縁フレキシブル電線
+イーグル模型 Hummer1000(電源9V)
15.6
田中電線 テフロン被覆錫メッキ 1.25sq 機器配線用フッ素電線
+イーグル模型 Hummer1000(電源9V)
15.3
エーモン ダブルコード 0.50sq相当
+イーグル模型 Hummer1000(電源9V)
15.2(コード加熱!)
イーグル模型 シリコン銀コード 14GA
+G&P M120ハイスピードモーター(電源8V)
21.8
イーグル模型 シリコン銀コード 16GA
+G&P M120ハイスピードモーター(電源8V)
21.6
オヤイデ電気 RSCB 1.25sp シリコンゴム絶縁フレキシブル電線
+G&P M120ハイスピードモーター(電源8V)
21.6
田中電線 テフロン被覆錫メッキ 1.25sq 機器配線用フッ素電線
+G&P M120ハイスピードモーター(電源8V)
21.4

配線によってサイクルが大きく変化しているのが分かると思います。

まずはイーグル模型 シリコン銀コード 14GAと16GAの比較です。
Hummer1000の時はサイクルに変化が無く、M120の時は0.2発/sの差となりました。
両者の違いは消費電流で、Hummer1000は約8A、M120は約13Aと1.5倍以上の差があります。
電流が多く流れるとその分電圧降下も大きくなり、それがサイクルに出ます。
流れる電流の大きさによって、14GAと16GAの差が出てくる結果となりました。
裏返すと軽負荷ならば配線を太くする必要が無く(細い配線でもOK)、重負荷ならば太くなくてはならないと言う事になります。
1.5倍以上の電流を流して「たった」0.2発/s、あるいは0.2発/s「も」、、、
それらを踏まえてどちらの線径を選ぶか、、、その人次第です。

次にイーグル模型 シリコン銀コード 16GAとオヤイデ電気 RSCB1.25sqの比較です。
これは同じ16GAで、導体(電線)の種類によってサイクルがどう変化してくるかの比較も兼ねています。
結果はHummer1000の時に0.1発/sの差があり、M120の時は変化がありませんでした。
負荷電流を変えても変化が無いということは、導体抵抗がほぼ同じであることを意味しています。

一般的に配線は細く密な物が沢山入っており、導電率の高い銀メッキがかかっているほど低抵抗と言われています。
、、、が、今回は線径が太く本数も少なく、メッキのかかっていない物と同様の結果となりました。
高効率配線において銀メッキが神格化されているかのような記述をよく見かけます。
あながち間違いではないのですが、その効力を十分に発揮するには特定の条件がつきます。それは「直流」か「交流」かです。

直流において、電流は導体内を一様に流れます。なので抵抗的に理想は「無垢の1本電線」です。
しかし配線は柔軟さを持ち合わせる必要があるので、細い銅線を束にした物を使用します。
銅線の線径が太いと、となり合わせの銅線との間に隙間が生まれ、無垢の1本電線と比べると有効断面積が小さくなります。つまり抵抗が大きくなります。
そこで、極力電線を細くし、柔軟性を保ったまま隙間を無くそうと言うのがこれらの高効率配線です。
なので、表面に数μ程度のメッキを施したところで大した差が出にくい、、、というのが実情の様です。
今回の実験を見ても、イーグル模型の配線とオヤイデ電気の配線では線径、入り数も2倍違う上に前者には銀メッキがかかっていても
サイクルはほぼ変化無し、と言う結果になっています。つまり、直流を用いる電動ガンの使用環境において
銅の裸線と銀メッキ線を比較した場合、メリットは殆どありません。

ちなみに交流の場合ですが、導体に交流の電流が流れると磁界が発生し、
電流は導体の表面近くを流れたがると言う現象が起こります。これを「表皮効果」と言います。
導体の材質と周波数によってその深さは異なりますが、銅の場合は10kHzでは表面から0.66mm程度、10MHzでは21μm程度と言った感じです。
これらの性質を踏まえると、導体表面に導電率の高い銀メッキを施すメリットが生まれてきます。
つまり、交流(周波数)を取り扱う音響分野やRCのアンプ(PWM制御)において真価を発揮できるのです。
つまり、直流電流しか扱わない電動ガンにおいて、銀メッキのメリットは殆ど無いと言えます。
(PWM制御を用いたスピコンを搭載している場合はまた別の結果が出るかもしれません)

2010.11.26 追記
電動ガンのスピコン、RCのアンプ等のPWM制御でも表層効果に依存するような高い周波数は使用しないようです。
うーん、ますます謎が深まってきました。

ちなみに銀メッキは酸化しやすく、その時の導電率は銅を下回ってしまいます。
故に、荒い扱いや風雨に晒される屋外での使用に向いていません。
なので、直流機器において表面同士が触れ合うスイッチ金具や接点には銀メッキではなく酸化安定性の高い金メッキが用いられます。
また、銅線の腐食(色がくすんで行き、最終的に緑青が生じる)を防ぎ、保護する目的として錫メッキが広く使用されています。
錫は導電率が低い為、前述した表皮効果が起こる交流用途には用いられません。表皮効果が起こらない直流用途がメインとなります。
また、はんだ付けがしやすいので、耐腐食性が求められ、はんだ付けが必要な箇所に適しています。

次に、シリコンコードと田中電線のテフロンコードの比較です。
シリコンコードと比較すると、明らかにサイクルが落ちているのが分かります。
公称導体抵抗の分かっているオヤイデRSCBとの比較では、150mm×2の長さで抵抗値が0.15mΩほど違います。
これに10A流れたとしても電圧降下の差はたった1mV程度です。
たった1mVの電圧降下で、サイクルが0.2〜0.3発/sも変化するとは考えにくいのですが、、、
と、ここでふとカタログスペックを見ると

・オヤイデ電気 RSCB 1.25sp シリコンゴム絶縁フレキシブル電線
導体線径/本数 0.12mm メッキ無し銅線/112本

・田中電線 テフロン被覆錫メッキ 1.25sq 機器配線用フッ素電線
導体線径/本数 0.18mm 錫メッキ銅線/50本

・・・有効断面積を計算してみると
・オヤイデ電気 RSCB 線1本辺り0.011平方mm 112本で1.27平方mm ほぼ1.25sqに合致
・田中電線 テフロンコード 線1本辺り0.025平方mm 50本で1.27平方mm ほぼ1.25sqに合致

計算上では抵抗値がほぼ同じなのですが、実測では結構な差となっています。

そこで注目したのが、表面の錫メッキです。
前述したとおり、銅線の表面保護として用いられる錫メッキですが、導電率が銅や銀の1/6程度しかありません。
それが表面にメッキされていると言うことは、モーター端子とはんだ付けした際に
導電率の低いメッキ層を挟んでいることとなり、そこが抵抗となってカタログスペック以上の抵抗差になっていると思われます。
私も今回実験してデータを取ってみるまで気づきませんでした(^^;
今思えばマルイのノーマル配線も銀色をしているので、錫メッキがかかっていると見て間違いないと思います。

つまり、マルイのノーマル配線からシリコンコードなどの高効率配線に変えた場合、導体の抵抗値軽減のみならず
メッキ層の排除によってさらに抵抗軽減が望める、、、と言うこととなります。
たった300mmの配線ですらこの位の差が出てしまいますので、電動ガン一丁分となると相当な差と思われます。

これらの事を総合すると、性能、コストパフォーマンス的に電動ガンに適した配線と言うのは「銅の裸線」となります。
・・・テフロン被覆でメッキ無しの銅線とか無いでしょうか?銀コード高いです(^^;