DEON光学技研
March Tactical 2.5-25×42 D25V42TIML

長野県のスコープメーカー DEONが製造しているスコープです。
DEONは数々の光学機器の設計に携わってきた方々が
究極のスコープを作る!と言う目標の元、2004年に設立された会社です。

当初はベンチレスト用の高倍率スコープを製造していました。
これが数々の大会で実績を上げ、瞬く間にその名を轟かせました。
月刊GUNでも、レポーターのTurkさんが度々詳細を取り上げることで
有名になりました。

DEON製のスコープは「March」の名で統一され、
このモデルはそのタクティカルラインのうちの1つです。
箱にモデル名とクリック、レティクルの仕様、
シリアルナンバーが記載されています。
付属品は説明書、予備の電池とレンズカバー、調整用レンチ、
3インチのサンシェード、保証書、仕様書、レティクルの解説書と
かなり充実しています。

保障書は購入日より5年有効との事です。
説明書は日本語で(海外仕様は不明です)、
機能説明から調整方法まで細かく記載されています。
こちらがスコープ本体です。

2.5倍から25倍と、コンパクトな全長と対物レンズ径からは
信じられないような倍率比&最高倍率です。
接眼ベル周りの画像です。
視度調整は接眼ベル自体を回して行い、ロックナットで固定します。

パワーダイヤルは削りにより滑り止めをつけており、
非常に綺麗に仕上げられています。
回した感触は重くも無く緩くも無く、重さも一定でスムーズです。

レティクルはSFPで、レンジングが有効な倍率を色分けしてあります。
また、レンズに近い部分に1DIV/1MIL@5Xと記載が施されています。
ノブはロープロファイルタイプで、こちらも削りで滑り止めが施されています。
1周回すごとに印がついており、今何周目かが分かりやすくなっています。

エレベーション、ウィンデージよりイルミ付きサイドフォーカスダイヤルが大きい
独特なシルエットになっています。
エレベーションは1クリック0.1MIL(100mで1cm)のメトリック仕様で
日本人には分かりやすい規格です。

調整量は合計28MIL(100mで280cm)で、
1周100クリック、合計280クリック調整できます。
ダイヤルは2周と80クリック分動かすことが出来ます。

ダイヤルの数字は、外周のイモネジを3箇所緩めると
好きな位置に動かすことが出来ます。
エレベーションノブに設置されている真ん中のダイヤルは
ゼロセットダイヤルと呼ばれる装置で
任意の位置でゼロインを行った後、
写真の様にコインなどで最後まで回すことにより
その位置以下にエレベーションを回せないように(基点設定)できます。

例えば目まぐるしく目標への距離が変わるシチュエーションで、
現在○○クリック目で、次の目標が□□mだから××クリック目、
差が△△クリックだから今の位置から、、、あれ?今何周目だっけ?
と言う時、ゼロセットしておけば即座に基点に戻ることができ、
基点から何クリック、と言う風にデータを取っておけば
即座に設定することが出来ます。
ウィンデージも1クリック0.1MILで、合計28MILの調整量があります。

各ダイヤル共に防水Oリングやグリスの重さがまったく感じられない
はっきりとしたクリック感です。
サイドフォーカスは公称10ヤード(ここだけヤード表記?)から
∞になっています。

ダイヤルはほぼ1回転でき、
数字の場所とフォーカス/パララックスフリーの場所は
異なるので注意が必要です。

サイドフォーカスの範囲は非常に広く、
各倍率で細かい焦点&パララックス調整が可能となっています。
ただ、高倍率になるとフォーカス有効範囲がシビアになるので
調整には慣れが必要です。
サイドフォーカスダイヤルの側面にあるラバー部分が
イルミネーションのスイッチになっています。

輝度は4段階で、押すごとに明るくなっていき、消灯、と言う感じです。
点灯させっぱなしでも、1時間でオートOFFとなります。

2010.11.19 追記

メーカー純正で低照度タイプ(スイッチの色が黒い)のモジュールが
オプションとして販売されています。
スイッチや制御部分は全てキャップに集約されています。
キャップはしっかりOリングで防水されています。

バッテリーはCR2032を1枚使用します。
底面には、倍率と製造国、メーカー名、
シリアルナンバーが刻印されています。
対物レンズのコーティングです。
黄色がかった、不思議なコーティングです。

MarchはレンズにEDレンズ(Extra-low dispersion lens)を使用し
高い解像度を実現しています。

このレンズは特殊な素材で出来たガラス(EDガラス)から作られ、
像を不鮮明にする原因となる色収差を抑えることができ
鮮明な像を得ることが出来ます。

カメラのレンズを初め、顕微鏡や極限まで収差を抑えることが要求される
半導体のステッパーレンズなどにも使用されています。
接眼側のコーティングです(ちょっと埃がついてます^^;)

こちらは対物と違い、グリーンや見る角度によって
青や紫に変化するコーティングが施されています。
2.5倍時の瞳径と鏡筒内の反射です。
内部での反射はまったくありません。
25倍時の瞳径と鏡筒内の反射です。
今まで見たことが無いような同心円状の光が見え、
可動部などに見られがちだった銀色の反射はまったくありませんでした。

一部分だけ繋がっているのは、サイドフォーカスのリンクだと思われます。
付属のフードを取り付けた画像です。

対物レンズ側にはφ46 P0.75のネジが、接眼レンズ側には
φ37 P0.75のネジが切られており、
周囲がまぶしい時などは接眼レンズ側に市販のカメラ用
減光フィルターや偏光フィルターを装着して対処することが可能です。

光学性能を著しく落とすので、対物側へのフィルター使用は
お勧めできないと記載してありました。
覗いてみた画像です。まずは撮影環境です。
雲ひとつ無い晴天で、まぶしいくらいの陽気でした。遠くはやや霞がかっています。
まずは2.5倍時の画像です。
像は解像度と原色再現性を重視している感じで、Leupoldの様な強烈な明るさ、キツいコントラストは無く
肉眼で覗いているのと殆ど変わらない感じで見えます。

覗きながら顔を上下左右に動かすと像が歪曲するのは低倍率の宿命ですが、2.5倍と言う低倍率にも関わらず
その度合いはかなり低く抑えられており、視界周囲の収差は殆ど感じられません。

レティクルはMMLレティクルというタイプで、ミルドットをハッシュマークに置き換え、さらに中間点(0.5MIL)を設けた
ミルドットの発展系レティクルで、非常に細く鮮明です。ちなみにエッチングレティクルです。
5倍時の画像です。
2.5倍と比べ、明るさや解像度に殆ど変化は見られません。
10倍時の画像です。
崖の草木や建物の外壁の細部に至るまで鮮明に見えます。
驚くことに、像の明るさの変化が殆どありません。
この日、25倍で撮ると陽炎がきつく像が不鮮明になってしまったので
別な曇天の日に撮影した同じ場所の写真を掲載します。

撮影場所から看板の位置まで840m(google Earth調べ)ありますが、
看板の文字やその後ろの建物の外壁に至るまでくっきりはっきり見ることができます。
こちらはいつもの70m先のポールを覗いた画像です。
まずは2.5倍の時の画像です。
5倍の画像です。
10倍の画像です。
ここまで殆ど色合いや明るさの変化が無いのが分かります。
最後に25倍の画像です。
ランプやアンテナ、ソーラーパネルの細部に至るまで鮮明に見ることが出来ます。
42mmと言う対物径を考えると、驚異的としか良い様のない像の明るさです。
2010.11.19 追記

ローライトコンディション時の画像です。写真は2010年5月29日の19時頃に撮影した物です。
街灯が点灯し始めるくらい薄暗くなってきています。
この状態で覗き、ローライトコンディション下での見え方を調べてみます。
2010.11.19 追記

2.5倍時の画像です。イルミネーションを最高輝度で点灯してあります。
2.5倍時は射出瞳径が16.8mmと十分確保できているので、像は十分明るく見えます。
(人間の瞳径は個人差もありますが、薄暗い状態で目を慣らした状態で約7mmです)
2010.11.19 追記

一方、25倍ではかなり暗くなってしまいます。やっと丸太が視認できるくらいでしょうか。
丸太の後ろの木々や葉っぱは暗くて輪郭が分かりづらくなっています。
この状態では射出瞳径が1.68mmしかなく、人間の瞳径に対し十分な光量は得られません。
この辺りは対物径42mmと25倍と言う倍率の組み合わせでは限界(と言うより無茶^^;)だと思います。

どちらかと言うと高倍率域は日中、周囲に十分な光量がある時向け、と言う感じです。
March 2.5-25×42はサイドフォーカス/パララックスフリーの最低距離が10ヤードと記載されていましたので
実際、パララックスが除去されるのかテストしてみました(隣りのお母さん、ごめんなさい!)
25倍時、10ヤード(約9.1m 実験では9m)でポールを覗き、フォーカス調整してみました。

なんと、この高倍率にも関わらずこの至近距離でフォーカスが合い、パララックスも取り去ることが出来ました。
全倍率域、超至近距離からフォーカス/パララックス調整が可能です。
こちらはイルミネーションを最低輝度で起動した画像です。
レティクルのスケール部分のみが光ります。
こちらは最高輝度の画像です。
周囲に拡散光は無く、鮮明に光ります。

レティクルのスケール部分は3段階の太さのラインで区切られており、
10倍時、一番小さいラインで0.5MIL、2番目のラインで1MIL、一番大きなラインで5MILの区切りとなっています。
オマケの画像です。
ポールを撮っている時、遠くを津軽海峡フェリーが航行していたので覗いてみました。
25倍時、船体に書かれた文字を読むことが出来ました。
ちなみにフェリーはあっという間に視界からいなくなるほどの速度で航行していました。
航路をGoogle Earthで測定してみると、約6100m先と表示されました。

R透過率:98.0%
G透過率:94.3%
B透過率:94.8%
全体透過率:95.5%

透過率は95.5%で、緑と青のバランスが取れたNightForceに近いバランスとなっています。
このモデルはDEON製品群の中では10倍比コンパクトスコープの部類に属し、314mmと言う短いボディ、645gと言う軽い重量にも関わらず
これだけの倍率比と明るさ、像を実現しているのは信じがたく、光学性能に関してはずば抜けたモデルだと思います。
ただし、意外とずんぐりむっくりなフォルムなので、乗せる銃によってはちょっとアンバランスな形になりがちです(笑)
また、マウントエリアが前方約55mm、後方約50mmと小さめなので幅広リングを使用すると
マウントベースとの兼ね合いもありますが、覗きにくくなる可能性もあります。

10倍比コンパクトスコープの中で「タクティカルライン」と銘打たれているこのスコープですが、
タクティカルラインはベンチレストラインに比べ実績が少なく、光学性能は高く評価されていても
「実戦経験のない、なんちゃってタクティカル」と評されることが多いです。
また、光学性能だけではなくトラッキング性能や耐久性の疑問があったりするのですが、私にはテストする環境も無く
「優れている」と言いきれないのが現状です(Turkさんのレポートを見る限りだと大丈夫そうです)
実績を積めば、評価はおのずとついてきますので、JAPANメイドの高性能スコープとして
これからも頑張ってもらいたいと思います。

ともあれ、1本でこれだけ色々な用途に使えるスコープはなかなか無いですし
なにより日本国内で購入でき、完全にアフターが受けられると言う安心感は何事にも変えられない重要な事だと思います。

*MarchとFFPレティクル*
現在、タクティカルスコープでは倍率と連動して大きさも変化するFFPレティクルが主流となってきています。
ところがMarchは後発にも関わらず、2010年5月現在でFFPレティクルのラインナップは無く、SFPのみとなっています。
その事が、Marchのタクティカルラインのイマイチ評価にも繋がっているようです。

これは推測ですが、10倍比という類を見ない倍率比ゆえに、低倍率から高倍率まで有効に機能するレティクルが
まだ開発できていないのでは?と思っています。月刊GUN 2007年6月号のDPMSライフルレポートにMarchのプロトタイプ(5-32倍)が
掲載されていますが、このモデルはFFPでした。しかし、32倍の画像を見るとレティクルがごん太になっていました。
低倍率と高倍率では撃つシチュエーションも異なるでしょうし、機能的なレティクル設計には相当なノウハウが必要だと感じます。

しかし、DEONの製品展開や開発の早さを見ていると、そう遠くない将来これらのモデルが現れると思います。
これからの展開や活躍に期待大です。
*2011年1月 FFPモデル(March-F)が発表されました*

ちなみにこのMarchスコープ、完全受注生産でメーカー在庫はなく、好みのレティクルなどある程度のオーダーメイドが可能なようです。

2010.5.11 追記
先日、フィールドに持ち込んで様々な場所を覗いてみました。
細く鮮明なレティクルは、白い的を狙うのならば良いのですが草木が入り乱れたり、薄暗い場所を狙う場合は
レティクルが細すぎて、素早い照準がつけにくいどころかレティクルを視認することが困難なケースが多かったです。
太いポストだけが見えており、中央が何も見えないようなことが多々ありました。

また、細かいハッシュによるレンジングは目盛りが細かすぎて何目盛りまで数えたかが分からなくなってしまいます。
2MILごとに数字を配置したり、副尺との差をもう少し分かりやすくしたほうが使い勝手が良いと感じました。

2010.11.19 追記
タクティカルラインにも関わらず、レティクルがSFPである理由を推測してきたのですが
DEON側ではあくまで「精密射撃」を行うため、レティクルの太さが変わらないSFPを選択しているとの事でした。

撮影日時:2010年12月27日
撮影風景(自宅前)
撮影日時:2010年12月27日
2.5倍時(中心の電波塔まで871m)
撮影日時:2010年12月27日
5倍時(中心の電波塔まで871m)
撮影日時:2010年12月27日
10倍時(中心の電波塔まで871m)
撮影日時:2010年12月27日
20倍時(中心の電波塔まで871m)
撮影日時:2010年12月27日
25倍時(中心の電波塔まで871m)
撮影日時:2010年12月27日
2.5倍時最大イルミ
撮影日時:2010年12月27日
10倍時最小イルミ
撮影日時:2010年12月27日
10倍時最大イルミ
違うシチュエーションでのリクエストで、2010年暮れに撮影した画像です。曇天時、自宅前の海岸で撮影しています。
カメラ設定は基本マニュアルで、自分の目で見たイメージに沿うように調整をしています(特に20倍〜はカメラを通すと一気に暗く写るため)
詳しくは画像のEXIF情報をご参照ください。また、画像をクリックすると大きな画像で見ることができます。
2011.4.14 追記

レンズ淵の解像度テストをするために、2.5倍時に
エレベーションとウィンデージダイヤルを目一杯まで締めこんだところ、
画像のように視界右斜め上に影が映って視界が欠けてしまいました。

Marchはエレベーション移動量を大きく取る為、
エレクターチューブの支点が本体中央に近い部分にあるという変わった構造になっています。
移動量を大きく取る=エレクターチューブの傾きが大きい、と言う事となり
低倍率時に視界内にエレクターチューブが映りこんでしまったようです。

倍率を少しでも上げると解消されますが、
低倍率でエレベーションを目一杯まで上げる場合は
あらかじめ傾斜付のベースを使ったりして、
なるべく限界まで締めこまないように配慮が必要です。
2012.9.22 追記

使い始めてから2年半、塗装したりぶつけたりで
こんなにボロボロになってしまいました。

フィールドでは細いMMLレティクルがどうしても狙いづらく
メーカーに相談したところ、太いMMLレティクルを用意しているとの事で
早速交換作業を依頼しました。

長野のディオン光学技研様に送って、1週間経たずに戻ってきました。
ディオン光学技研様によると、通常のMMLレティクルより約1.6倍太くなっているそうです。
以前と比べ、視認性が大幅に向上し、格段に狙いやすくなっています。

イルミも発光面積が大きくなっているせいか、周りが明るい時でも十分視認できるようになりました。

標的射撃ではなく、狩猟やフィールド競技、ゲームに使う場合は太いMMLが俄然お勧めです。
何より感動したのが、レティクル交換の際の作業風景と
気づいた点(ディオプターの設定)について報告書を添付していただいた事でした。

ここまで光学機器とユーザーに親身になってくれる姿勢には
ただただ頭が下がる思いです。
作業風景と、気づいた点を何点か写真にしてくれています。
Bの写真の機材の上に、ぬいぐるみが乗っかっているのがほほえましいです(笑)

私のディオプター設定はかなり特殊らしく、視力が1.5あるにも関わらず
-2.8(通常は-0.5)で使用していたそうです。

しかし、私の目では通常のディオプター設定ではレティクルが滲んで
見えなくなってしまうので、何かしら人間側に問題がありそうな気がします(汗)
価格:¥270000
全長:314mm(フード無し) 390mm(フード有り)
重量:645g(フード無し)
チューブ径:30mm
倍率:2.5〜25倍
フォーカス機能:サイドフォーカス、視度調整
ノブ:フィンガークリックタイプ 1クリック0.1MIL エレベーション、ウィンデージ共にトータル28MILの調整量
レティクル:MMLレティクル
対物レンズ径:42mm
対物側チューブ径:51mm
接眼レンズ径:34.9mm
接眼側チューブ径:41mm
アイリリーフ:85-100mm(2.5倍) 89-96mm(25倍)
瞳径:--(2.5倍時) 1.68mm(25倍時)
内部処理:反射防止の塗装? シボ加工の様な処理
対物側コーティング:黄色系マルチコート
接眼側コーティング:グリーン系+青紫系マルチコート
Field Of View : 8°(2.5倍時) 0.8°(25倍時)