スコープのRGB再現性解析

*注意*
この記事内容は、かなり前のものです。現在、調査に用いている方法は基本こそこの実験と同じですが機材や環境は異なります。
環境が異なっても、出てくるデータは誤差の範囲内程度なので、気にせず計測を進めています。


前回の瞳径明るさ測定に続き、何かスコープの光学性能を測る方法が無いかと考えていたところ、
掲示板でN村さんに「基本画像とスコープで覗いた画像のRGB成分を抽出し、比較する」と言う方法を教えていただきました。
(考案者 N村さんのブログ ttp://blog.livedoor.jp/nmura/)

そこで、自分なりに機材を組んで、手持ちのスコープで実験を行ってみました。

実験装置
    

実験装置は基本画像となるRGB表示装置(ノートPC)、スコープ固定台、撮影ブースからなります。
当初、RGB基本画像としてカラーセロファンを用いた指標を作ったのですが、光による表面の反射がひどく
写真を取った際の色の濃淡のばらつきが大きく、使い物になりませんでした。
そこで、均一に見えて、なおかつ様々な色の表示できる液晶ディスプレイを用いました。

スコープはVブロックに置き、安定した状態にします。台は微調整可能で、基本的にカメラは固定、
台を動かしてスコープが最適な構図になるように調整します。

カメラはオリンパスのC-770で、撮影の際はPC画面にピントを合わせ固定、ホワイトバランス、ISO感度、F値もろもろ
全て固定の完全マニュアルモードで撮影します(均一な条件を得る為)
ちなみにF値は2.0で固定してあります。照明は蛍光灯で、外が完全に真っ暗になってから実験を行っています。

    

次に、RGBそれぞれ基本となる画像を撮影します。上の写真が基本画像で、スコープの光軸と重なる部分のRGB値を
ペイントソフト等で取得します。左からそれぞれR:181 G:190 B:241と言う値を得ました。

そして、カメラを固定したままスコープをVブロックに乗せ、視界がケられない位置に動かします。
一旦スコープを外し、ノートPCの画面にピントを合わせ、シャッターボタン半押しの状態でスコープを設置、撮影します。



すると、このような画像が取得できます。この画像のクロスヘア中心付近の色成分を調べ、最大値をサンプリングして
基本画像値との比率を求めます。そして、これらをまとめたのが次の表です。
ちなみに測定時、全て最低倍率で測定しています。
明るさはRGBの値から算出でき、計算式は

明るさ = ((R × 299) + (G × 587) + (B × 114)) / 1000


となります。

スコープ名 R R比率(%) G G比率(%) B B比率(%) 明るさ 明るさ比率(%)
基本画像 181 - 190 - 241 - 193 -
LEUPOLD Mark4 3.5-10*40 LR/T M1 180 99.4 186 97.9 225 93.4 189 97.8
TASCO AG3-9*50 180 99.4 180 94.7 212 88.0 184 95.2
TASCO TR-X コマンダー 3-10*42 173 95.6 178 93.7 228 94.6 182 94.4
PT3-10*42 174 96.1 178 93.7 223 92.5 182 94.3
TASCO SA3.5-10*42DS 178 98.3 175 92.1 220 91.3 181 93.8
TASCO G-Sniper 4*40 166 91.7 172 90.5 180 74.7 171 88.7
TOKYO MARUI PSG-1 4*40 162 89.5 169 88.9 191 79.3 169 87.8
TASCO TITAN 1.25-4.5*26 160 88.4 167 87.9 193 80.1 168 87.0
TASCO EURO Class 6*42 154 85.1 168 88.4 180 74.7 165 85.6
G&P M3type ILM3.5-10*40 155 85.6 161 84.7 163 67.6 159 82.6
TASCO G-Sniper 4*40 LM 152 84.0 159 83.7 165 68.5 158 81.7
HAKKO Erectro point Mk8 4*40 170 93.9 112 58.9 201 83.4 140 72.3
レッドイーグル 4-12*40 168 92.8 112 58.9 202 83.8 139 72.0
Redfield 3-12*44 150 82.9 108 56.8 182 75.5 129 66.9

(注意 : N村さんとは実験環境が異なる為、値も異なってきます)
(注意2 : 現在(2007年4月25日現在)、異なる簡易実験装置を製作し、データはそちらで取得していますので、この値とスコープインプレ内のデータは一致しません)

このような結果が出てきます。これにより、そのスコープが何色に対して強く、また弱いのかが良く分かります。
また、視界が○○色に見える、と言うのも、透過する色から見ることができます。
結果を見ると、LEUPOLD Mark4がずば抜けて高い透過率を誇っているのが分かります。
インデックスマッチレンズシステムの公称透過率の98%にほぼ合致する値です。
また、コストパフォーマンスが抜群に良いとされるTR-XやPTも、すばらしい性能を誇っていることが見て取れます。
低倍ならば、TR-XはMark4に迫るだけのRGB再現性を誇っています。

面白いのが「カラーバランス」で、G&PのM3レプリカを見ると、青だけ非常に透過率が悪いことが分かります。
先日フィールドで覗いた際、視界が黄色がかって見えたのですが、今回のRGB再現性調査により
Bの値が低い=R、Gの合成色である黄色に見える、と言う裏付けも出来ます。
視界が青いレッドイーグルもGの再現性が悪く、RとBの合成色である紫に見えることになります。

もう一つ、面白いのがTASCO GスナイパーとGスナイパーリミテッドの値の違いです。
リミテッドの方が7%ほど明るさの値が低く出ていますが、これはレティクルの方式による物です。
Gスナイパーはワイヤーレティクル、Gスナイパーリミテッドはガラスエッチングレティクルです。
ガラスエッチングレティクルは、ガラスの板にエッチングによってレティクルを掘り込む物ですが
レティクルの分、1枚ガラスが増えて、そこで光の反射が起こっていると考えられます。

次に、最低倍率時と最高倍率時を比べてみます。比較対象はMark4とTR-Xです。

スコープ名 R R比率(%) G G比率(%) B B比率(%) 明るさ 明るさ比率(%)
基本画像 181 - 190 - 241 - 193 -
LEUPOLD Mark4 3.5-10*40 LR/T M1(3.5) 180 99.4 186 97.9 225 93.4 189 97.8
TASCO TR-X コマンダー 3-10*42(3) 173 95.6 178 93.7 228 94.6 182 94.4
LEUPOLD Mark4 3.5-10*40 LR/T M1(10) 175 96.7 179 94.2 222 92.1 183 95
TASCO TR-X コマンダー 3-10*42(10) 105 58.0 98 51.6 92 38.2 99 52

Mark4は倍率を上げても色再現性に殆ど変化はありませんが、
TR-Xは一気に性能が落ちているのが分かると思います。最低倍率時と比べ、半分程度の色再現性しかありません。
像が暗い、と言う表現を良く見かけますが、まさにその通りで、像全体が黒っぽくなっています。
TR-Xの製造コストではこの辺りが限界なのかもしれません。倍率を高くして使用する際はこれらのリスクを背負わなくてはなりません。

このように、RGBの単純比較のみで、様々な特徴をつかむ事が出来ます。
今後、スコープインプレを書く際はRGB再現性も一緒に記載していこうと思います。

最後に、この方法を教えていただいたN村さん、改めてお礼を申し上げます。ありがとうございました(^^