TASCO TR-X CROSSFIRE 3-9×44IRS レストア

先日、ストラトキャスターさんが某イベントで購入してきた
TASCO TR-X CROSSFIRE 3-9×44IRSのB級品です。

概観だかなんだかでハネられたらしく、機能にまったく問題は無いとの事らしのですが、
その日のうちに不具合が報告され、我が家にやってきました。
不具合とは

・エレベーションノブのロックが効かない(汗)
・エレベーションダイヤルが無限に回る(爆)

です。

対物レンズ側から内部のエレクターチューブを見たところ、
エレベーション側に偏った状態で固定されていた
(ウィンデージは正常に機能)
ので、内部に不具合があるものと判断し、分解を試みました。
まずはノブカバーのロックネジを2本外します。
ノブ上部にゴム系接着剤で塗り固められた部分があるので、
細いドライバーなどで丁寧に接着剤を剥がすと、
中から小さいマイナスネジが出てきます。

ロックタイトが塗布されているらしく、そのままでは回らないので
ヒートガンで暖めてロックタイトを溶かし、回します。
ロックネジを取っても、ノブ自体が中のネジにロックタイトで固定されているので、
こちらもじわじわ炙って溶かし、ノブの一番上を回して取ります。

ウィンデージはロックが効くので取り外しが楽でしたが、
エレベーションはダイヤルごと空転するので、外すのが困難でした。
すると、中のカバーに1本、真鍮のネジがついているので、これを外します。
このネジはノブを引っ張ったときにストッパーの役目を果たしているネジです。
ネジを外し、カバーを引っ張ると、すっぽ抜けます。
エレベーションダイヤルの中を覗くと、
内部のローレットが見事に削れ落ちています。

本来、ノブ本体の突起4本とこのローレットが噛み合うことで
ダイヤルがロックされる仕組みになっているのですが、
無理に回したのか組み込みミスなのか、削れてしまい、
突起と噛み合わなくなっていました。

内側にローレットを切ったダイヤルなんて、うちの旋盤では
製作できないので、この再生は諦める事にしましたorz
ダイヤル本体側の写真。
削れたアルミの粉がびっしり付着しています。
ダイヤル基部(↓LOCKと書かれている部分)を丸ごと回すと、
ダイヤルがアセンブリごと抜き取れます。
ゴム板などで滑り止め対策をした上で、バイスにVブロックを使って
しっかり固定し、回して取ることが出来ました。

後に旋盤のチャックでくわえればいい事に気が付くorz

( ゚д゚)

(つд⊂)ゴシゴシ

(;゚д゚)

(つд⊂)ゴシゴシ
  _, ._
(;゚ Д゚)

え〜と、何か、、、無い、、、ですね、、、

TR-X CROSSFIREはその場でノブがグルグル回り、
内部の調整子が上下する事で、エレクターチューブを押す方式を採用しています。
ダイヤル内部には、調整子と噛み合うように四角い穴が空けられています。

まさか調整子が入ってないとは、、、
組み込みミスのレベルじゃ無いような気が、、、
B級品と言っても、動作テストくらいはすると思うのですが、
その時にエレベーションを回して視界が上下することを確認しなかったのでしょうか、、、

CROSSFIREは、身近な人を含め、数多くの不具合が報告されていますが
まさかここまでとは思ってもみませんでした。
とりあえず、調整子がないとスコープとして機能しないので、
調整子を作ることにしました。

基本はネジなので、市販のネジを改造する方法を思いつきましたが、
ネジピッチが0.4mmと特殊な為、丸ごと真鍮丸棒から作ることにしました。
幸い、うちの小型旋盤のねじ切りは0.4mmから加工可能でした。
早速内部のギアを組み替えて、ピッチ0.4mm仕様にします。
バイトはハイスを使用。軽金属をシャープに仕上げるには
キンキンに砥いだハイスが一番です。

調整子を作るより、このバイト砥ぎの方が難しかったです(笑)
純正の形状をトレースして、ネジを切った後にフライスで頭を四角にさらい、
ヤスリをささっとかけて完成です。

純正の調整子は先端部分とネジ部分の2ピースでしたが、
めんどくさかったので1ピースで作りました。

1個目はネジが微妙〜に緩かったので、クリアランス調子して
2個目を製作、純正と同じフィーリングになりました。
後はグリスを塗って組み込むだけです。

ちなみに、今回も内部不活性ガスが抜けるのを覚悟で作業しています。
窒素ガス充填設備が欲しいです。
とりあえず、エレベーションも無事機能するようになり、
息を吹き返したTR-X CROSSFIRE。
光学系に異常が無かったのが不幸中の幸いでした。

改めて、品質管理って大事なんだと思い知らされました。