エレベーション/ウィンデージと像

現在のスコープはイメージムービングと言う、スコープ内部のレンズ群を傾斜させて
固定されたレティクルに対し、像を移動させると言う方式を取って着弾点を調整しています。

この方式は、スコープ内部にあるエレクターチューブと言う
像を逆さまにする正立レンズ群やズームレンズ群が入った筒を動かすのが大半で、
写真のようにエレベーション/ウィンデージダイヤルと連動した突起が
一端を固定したエレクターチューブを押すことで傾斜させる仕組みです。

このイメージムービング方式は、エレクターチューブが傾けば傾くほど
対物レンズの端っこの像を使うこととなり、解像度が悪化すると言われています。
(レンズの湾曲が端っこに行くほど強くなるため)
↑の写真は中立位置ですが、試しに目一杯までエレベーションを締めこんでみると
←の写真の位置までエレクターチューブが移動します。
角度を変えるとこんな感じです。
エレクターチューブの端っこが、ボディ内側に接触しているのが分かります。
実際にどのくらい解像度が悪化するのか、実験してみます。

実験には4種類のスコープを用い、最低倍率と10倍でそれぞれ
中立位置→エレベーション/ウィンデージを目一杯締めこんでみます。

使ったカメラはニコンのD60で
1/60秒、F20、ISO200、WBオートで撮影しています。

目標は、いつもの70m先のポールです。
1本目はTASCO TR-Xコマンダー 3-12×42です。
レティクルをLEUPOLD Mark4に移植したので
パチポルドのレティクルを移植しています。

エアソフトガン向けスコープとしてはベストセラー品で
低価格高品質の代名詞的な存在です。

エレベーション/ウィンデージ:ニュートラル
倍率:3倍
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エレベーション/ウィンデージ:締め込み
倍率:3倍
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エレベーション/ウィンデージ:ニュートラル
倍率:10倍
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エレベーション/ウィンデージ:締め込み
倍率:10倍
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これと言って像に変化は無く、ニュートラル位置と変わらない様に感じます。
続いてCabela's ALASKAN GUIDE 3.5-10×44AOです。
ケンコー光学のOEMで、アメリカではハンター向けのスコープとして販売されています。

エレベーション/ウィンデージ:ニュートラル
倍率:3.5倍
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エレベーション/ウィンデージ:締め込み
倍率:3.5倍
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エレベーション/ウィンデージ:ニュートラル
倍率:10倍
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エレベーション/ウィンデージ:締め込み
倍率:10倍
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こちらも特にこれと言った変化は無く、エレベーション/ウィンデージの状態によらず、視界全体が鮮明なままです。
次はLEUPOLD Mark4 3.5-10×40 LR/T M1です。
レティクルをさっきのTR-Xの物と交換しています。

今までの物より対物レンズが小さい機種ですが、
影響は出るのでしょうか?

エレベーション/ウィンデージ:ニュートラル
倍率:3.5倍
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エレベーション/ウィンデージ:締め込み
倍率:3.5倍
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エレベーション/ウィンデージ:ニュートラル
倍率:10倍
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エレベーション/ウィンデージ:締め込み
倍率:10倍
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Mark4もこれと言って支障は無く、像は鮮明なままです。
最後はDEON光学技研 March Tactical 2.5-25×42 D25V42TIMLです。

エレクターチューブの支持機構が他の3機種と違い、ほぼ本体中央部にあると言う
変わった特徴を持っていますが、果たして、、、

エレベーション/ウィンデージ:ニュートラル
倍率:2.5倍
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エレベーション/ウィンデージ:締め込み
倍率:2.5倍
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エレベーション/ウィンデージ:ニュートラル
倍率:10倍
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エレベーション/ウィンデージ:締め込み
倍率:10倍
大きい画像はこちら
最低倍率の2.5倍時にダイヤルを目一杯締めこむと、右上に像欠けが発生しました(撮影のケラレではありません)
対物レンズの淵による解像度低下ではなく、エレクターチューブの端っこが映りこんでいるようです。
倍率をちょっとでも上げると、像のズームと共にこの欠けは消えてしまいます。
解像度の低下はこれと言って見られませんが、あまり気持ちの良いものではありません。
(今まで目一杯まで締め込みませんでしたが、、、びっくりしました^^;)

今回行ったテストでは、解像度の低下自体は見られませんが特殊な機構のスコープで
視界の一部に欠けが発生することがわかりました。

ウィンデージは無いとしても、エレベーションを目一杯締めこむと言う事は十分考えられ、しかもその時は大抵遠距離を狙う時です。
その際に解像度の低下もしくは視界不良が起こると、とても精神衛生上良いとは言えません。
なので、なるべくこう言った事態を避ける為にもスコープを購入する際はエレベーション/ウィンデージを締め込み、
倍率を最低→最大まで変化させて異常が無いか調べることをお勧めします。

解像度低下、視界欠けが発生する場合、なるべく締めこまないように弾道にあわせ、あらかじめ傾斜のついたベースを使ったりと
欠点を補うような運用方法が要求されます。